Kikoh Matsuura | Singularity  




27.January.2014
at Tokyo Metropolitan Gymnasium – Main arena

この宇宙は、いまだ解明されぬ無限に小さな点、“特異点”(宇宙の原初の姿)から始まったとされている。 私たちも含め、今ここに存在するすべてのものは、そこから生じた無数の粒子でできている。 始まりから続く同じ流れのなかで、私たちは何かを共有し、今もなお、つながり続けている。

本作は、無数の声を重ねて構成されたサウンド・インスタレーションである。声は、息とともに放たれる、人という存在の最も内的な震えであり、身体の奥底から立ち上がる痕跡でもある。誰かの声に触れることは、その人の「存在の瞬間」に触れること――見えない他者の気配と響き合いながら、自らの輪郭を静かに見つめ直すことでもある。それぞれは異なる声でありながら、重なり合ううちに個としての輪郭は次第に溶け合い、やがて音のうねりとなって空間を静かに満たしていく。それは、粒子が世界をかたちづくるように、異なる存在が響き合い、共鳴しながら、ひとつの場を立ち上げていく様を象徴している。鑑賞者は、たったひとり、広大な場に身を置き、音と、そして自らの存在と、静かに、真正面から向き合うことになる。それはまるで、宇宙が始まった“ひとつの点”に、音と身体がふたたび重なり、粒子となり世界をかたちづくる――原初からはじまり、永遠へと流れゆくような、静謐な時間の中で。